第139章 イルミネーションコミュニケーション
行き交う人々の雑踏が遠のいて行く中隣からはお菓子を噛るパリパリという音が聞こえていて
必死に重たい瞼と格闘していると
「少ししたら起こしてあげる」
彼は優しい声色で言うと私の頭をそっと自身の肩に誘った
途端にフワフワと浮上する意識の中お礼を伝えるとクスリと笑みが聞こえた気がした
________"
「沙夜子、起きな」
緩く揺さぶられて瞼を開くと至近距離に彼の顔が見えて意識がはっきりと覚醒する
「……おあ、おはようございます……すみません寝ちゃって」
「別に。もう歩けそう?」
「はい!」
「行こうか」
ドキドキのデート(気分)中に爆睡を決めるなんて自分でどうかと思うが柔らかい表情を浮かべた彼が手を差し伸べてくれるので笑顔で手を取った
海辺の施設故に隣接された広いテラスへ出ると夕焼けに輝く海面がキラキラと光っていて眩しさに目を細める
海風が強くて拐われる髪は揺れ彼の黒髪が艶やかに靡いた
キンと冷たい空気は急速に体温を奪い痛くなる耳や鼻
それでも私は今をとても楽しいと感じた
橙色に染まった海に大きな船が浮かんでいて
「サン○マリア号ですよ!」
私が声を弾ませれば彼は表情を一層柔らかくした
「あの船?」
「はい!小さい時お爺ちゃんが乗せてくれました!」
「楽しかった?」
「はい!」
「沙夜子は幼い頃から色々な経験をしてるんだね」
単調に言った彼だが光に瞳を細めた彼の横顔はこの光景を焼き付けている様に儚く見えてぴったり寄り添えば彼の身体は随分暖かかった
「冷えたね。中に入る?」
「はい」