第138章 水族館に行こう
彼は確かにマイペースだが海月には独断興味が無い様子だったし私のペースに任せるといったスタンスだった
「…………イルミさん?」
後を追って彼を覗き込めば彼は単調に
「口が滑った」
と言った
……口が滑った……?
という事は彼は先程の会話で何か私に知られては不味い事を言ったらしい
先程の会話を振り返る
彼でも転んだりするという事実と
彼は暗闇でも目が利くという事実
私は確信すると同時に身体中が体温を上げた事が解った
「……ちょっと待ってください……暗くても見えるんですよね。」
私の問いかけに頷いた彼はゆるゆると頭を掻いた
「………停電した時お風呂で助けてくれたけど見えてたんですね?」
彼はチラリと私に視線を向けるとコクリと小さく頷いた
「…………」
「…………」
以前自宅で入浴中に停電に見舞われて軽いパニックに陥った際、彼は的確な指示と共に私を助けてくれた
感謝している。しかし、私は入浴中でその時の格好は勿論素っ裸だった
つまり私の裸は随分始めの頃に見られていた事に成る
「……見えてないって言うたじゃないですか」
「見えてない、とは言ってない」
「!!そんなん屁理屈です!」
「黙っていた事は悪かったけど、正直に見たと話すより黙っていた方が平和的に共存出来ると思っての判断で悪意は無い」
「……………解りましたよ……」
真っ直ぐに私を見据えた彼は彼なりに焦っているのか普段より口数が多くて私は食い下がるのを止めた
今更何を言ったって過去は変わらないし、彼の意見に同調したのも事実だ
しかし水族館に来て裸を見られていた事実が露見するとは思っても見なかった……
まだまだ熱い体温を逃がす様に随分な時間を費やして海月を眺め、私達は水族館を後にしたのだった