第138章 水族館に行こう
12月09日、日曜日
私達はバス停にてバスを待っている
というのも数日前に彼が水族館へ行きたいと言い出したからだった
無欲だった彼に何らかの欲が芽生え自己主張してくれる事が嬉しくて私は二つ返事で快諾した
「バスまだかなぁ……」
ベンチにてぼんやり呟いた私に彼は時刻表を眺めながら
「あと3分」
と教えてくれた
目的地はバスで一本、海○館である
イルカショーは無いと事前に伝えておいたが彼は独断興味無さそうに ふーん と呟いただけだったので本当に水族館へ行きたいのかどうかは不明だが、私が俄然乗り気なので聞かないでおいた
早朝だった為か人も疎らなバスに揺られる
「楽しみですね!」
「うん」
交わした会話はそれだけだったがワクワクと胸は高鳴った
到着して真っ直ぐに向かった海○館
広場には沢山のイルミネーションの気配があり絶対に夜まで粘る事を密かに誓いながら私達は大きく特徴的な水族館へ足を踏み入れた
入館して直ぐに見えたのはトンネル型の水槽
両横は勿論頭上にもユラユラと水が揺れていて一面ブルーの世界が広がる中、彼は大きな瞳に目一杯光を反射させてキラキラと輝かせた
「小さい時にお母さんが連れてきてくれて、このトンネル歩いた時めっちゃ嬉しかったです」
「昔からある水族館なんだね」
「はい!」
まだ幼い弟をわざわざ預けて私だけを連れて来てくれた水族館は幼い私にとって楽しくて仕方がなく素敵な思い出が詰まった場所だった
そんな思い出の地に彼と居るという事実を噛み締める様に彼をそっと見詰めた