第136章 歌のヒトコマ
自身もカラオケは好きなので歌いはするが、とにかく彼の歌を聞いていたくて
タイトルが解らないと言った彼の代わりに率先して曲を入れムービーを撮る事に全力を注いだ
リクエストすれば彼の知る限りで歌ってくれる事に胸キュンし過ぎて私はずっとニヤニヤしていた
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時間はあっという間に過ぎて気が付けば朝だった
05:00
フリータイムが終わりカラオケを出ると外はまだまだ暗かった
冬の朝は一晩冷やされた空気が冷たく漂い世界が動き出す前の静寂が広がる
身体を震わせる寒さに肩を抱き締め擦りながら帰路を歩く
静かな街並みにコンクリートを踏み締める音は私の物だけで隣の彼を見上げると
「仕事平気なの?」
真っ直ぐ前を見据えたまま彼はポツリと言った
「大丈夫でしょ。多分。……イルミさんは?」
「平気」
ジャリっと小石を踏み締めた自身一人分の足音を少し寂しいと感じていたが
喋れば彼も私と同じ様に白い息を残していて
「このまま寝ずに朝御飯一緒に作りません?」
「良いよ。」
私達は寒い早朝に不釣り合いな程元気に会話を弾ませ、沢山の白い息は生まれては次々色を消した