第136章 歌のヒトコマ
「イルミさんこっちに来てから家とか車で私の流す音楽聞いてるでしょ?何か歌いません?」
「……歌………先ずは沙夜子が歌ってみせてよ」
ビシッと私を指差してグラスを傾けた彼は真っ直ぐ私を見据えて動く気は無いらしいので
「ではお手本に……」
なんて言いながらマイクを手にしてON○ PIECEの主題歌を入れた
毎週録画を楽しみにしている彼は流れ出したメロディーにピクリと反応を示してテレビ画面をガン見した
私が歌い終わる迄終始画面を見ていた彼は静かに成った室内でパラパラと拍手をしてくれた。めちゃくちゃ無表情だが
「歌詞が画面に出るなら歌えるかも」
と言った彼にマイクとデンモクを渡すと私を見て学習したのか早速使い方をマスターしていた
ピッピッという操作音を聞きながらグラスを傾けていると大音量で流れ出す音楽
彼が選んだ曲はまさかのボーカロイドだった
「!!!」
【砂○惑星】と表記された画面とマイクを緩く持った彼を交互に見てしまう
以前歌をリクエストした際に抑揚無く歌を口ずさんだ彼が抑揚ありまくりの曲を果たしてどう歌い上げるのか……
ごくりと唾を飲み込んだのは不安や怯えに加えて好奇心が沸き上がっているからだ
イントロが流れて歌い出した彼に私は驚きの余りグラスを取りこぼしそうに成った
(ちゃんと歌えてるーッ!!!!!な、な、な、なんでー!!!!!)
まさに驚愕だった