第135章 何気無い日曜日
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あっという間に23時を過ぎた
私達は録画していたテレビを見ながら夕飯を済まして交代で入浴して何時も通り並んで座っている
シンと静かな部屋には彼が捲る本のページが擦れる音だけが響き
私は忙しなく動く時計の秒針が止まれば良いのに、なんて事ばかり考えている
0時を過ぎればまた明日に成る
明日に成れば彼と過ごす日常が減ってしまう
「イルミさん」
「んー?」
呼び掛ければ聞こえる気の抜けた声
思わず"好きです"と口に出してしまいそうに成って唇を閉じると彼の横目と目が合った
途端に溜息を付かれてパタンと閉じた本
彼はちゃぶ台に頬杖を付くと私に向き合った
「何」
「………別に何も……ないんですけど」
彼は只じっと私を眺めた後に
「じゃあどうして泣きそうになってるの」
と単調に言った
私は泣きそうになっていない
涙も溜まっていない
「泣きそうじゃないです………」
しかし絞り出した声は震えていて
「あっそ」
素っ気なく言った彼だがその声色は優しかった
「それよりさ、俺行きたい場所があるんだよね」
空気を変える様に放たれた言葉
其れは確かに存在する二人の未来の話しだった
彼はきっと解ってる
解っていて敢えて別れる日の事は話さない
一時の誤魔化しに過ぎない彼の言葉は優しくて私は潤む瞳に気付かないふりをして笑顔で頷いていた