第135章 何気無い日曜日
ごくりと唾を飲み込み押し黙る事数十分
彼は漸く針を全て手入れし終えて段ボール箱にキッチリ仕舞った
「…………」
目だけを動かして無言のまま彼の様子を伺ってみる
彼は悠々とした所作で座椅子に座ると
「喉が乾いた」
と短く言った
つまり彼は"お茶を入れて来い"と言っているらしいのだが
私が動けない事を忘れてしまっているのだろうか………?
伸ばしたままの自身の腕を見て不自然過ぎる静止にそれは無いだろうとチラリと彼を見遣るとばっちり目が合った
「何してるの?」
なんて間の抜けた声を上げた彼に
「う、動けないんですけど」
と伝えれば
「あぁ、忘れてた」
彼は白々しく言った
絶対的に嘘だと解るのはわざとらしく細められた瞳がそう物語っていたからだった
彼はゆっくりと先程同様に距離を詰めて悪戯に私を見上げる
途端にむせ反る色香にクラクラして懸命に退こうと試みても身体はピクリともしなかった
じわりじわりと距離を詰めた彼は意地悪に笑って見せると途端に私を抱き締めた
「っ………!?」
突然の出来事に付いて行けずに呆然とする
只彼の体温と彼の香りを感じて暑くなる
「イ………ルミさん……?」
咄嗟に出た声は羞恥から震えていて更に恥ずかしく成った
彼の大きな手が首筋に触れた途端にパタリと重力に落ちた腕
「針、そのままだったね」
私を解放して離れた彼は淡白な雰囲気を惑い何事も無かったかの様に言った
「~っ……!!!」
彼の行動に翻弄されてドキドキしているのは私だけで
彼はその反応を楽しんでいる節がある
「もう動ける筈だけど、どうしたの?」
なんて言った彼は大層白々しく首を傾げるので
込み上げる気恥ずかしさがそのまま頬を熱くして私は暫く俯いたまま動けなかった