第135章 何気無い日曜日
「イルミさんも食べてるじゃないですか」
「駄目なの?」
「……駄目じゃないです……太りますよ」
「沙夜子と一緒にしないで」
「酷いです!これ以上痩せたら駄目って言うくせに脅して」
「脅してない。」
別に険悪な雰囲気は全く無い
彼は時たま意地悪を言って私の反応を伺う事があるのだと気が付いた
その理由や目的は定かでは無いが
彼にしてみれば他愛無いじゃれあいやコミュニケーションの一種なのかもしれない、なんて思っている
昨日歩き回った事で多少の疲労を身体に残している私には甘いドーナツが本当に美味しく感じて隣を見遣れば無表情ながらもドーナツに噛り付く彼がびっくりする程可愛かった
すっかり空になった皿を下げるとカチャカチャと針の音が鳴る
すっかり聞き慣れた彼の発する生活音だ
私は隣に座って彼の手先を眺める事にした
彼の針には種類があるらしく大小様々な針が種類別に陳列している
そんな中で一際大きな針が目に付く
原作にも何度も登場した丸い飾りの付いた針は特徴的で
「触って良いですか?」
思わず口に出してしまった
先程からチラチラと私の様子を伺っていた彼は呆れた様にすっと瞳を細めると
「針先には触れないでね」
と言った
針先に触れるのは危険そうだし頼まれたって触れたく無いので頷くと一本針を差し出されたので受け取る
正直了承してくれるとは思っても見なかった
"仕事道具""暗殺道具"と私に説教する彼がいとも容易く針を差し出してくれた事に感激したと同時に
「……重たっ………」
針の重量感に驚いた
飾りだと思っていた丸い物が錘の様に成っていて指の間に何本も挟み込んで投げ刺すなんて至難の技だと理解した
「多少重たい方が的に当て易いから」
なんて言う彼だが、私からしてみれば多少なんて重さでは無かった
やはり彼は常人では無い……
「ありがとうございます」
と言って元の位置に針を戻しケースに収納された小さな針を手に取ってみる
透明のケースに綺麗に収納された針