第135章 何気無い日曜日
残った時間であと何回彼と食事を共に出来るのか解らないのだと考えてしまえば私は即座にラップを被せて彼に駆け寄った
「本気?」
胡座をかいてガシガシと頭を掻いた彼は呆れた表情を浮かべているが私は本気も本気だ
真っ直ぐ見据えたまま頷くと彼はまた先程同様腕立て伏せする体勢に入った
否定的な言葉が無いという事は良いという事だろう
その証拠に彼はじっと私を待っていた
「失礼します………」
自分で言っておいて極度に緊張した私はぎこちなく彼の背中に腰かけたのだが
「………乗るなら跨がって」
と指摘されて慌てて跨がる
彼は事も無さ気に片手で軽々と腕立て伏せを再開させた
もしかしなくとも私は錘として全く意味を成していない
冷静に考えずとも何トンという扉を開く事が可能な彼が私ごときを重いと感じる事等皆無なのだろう
ゆらゆらと揺れる背中に跨がり私は只ぼーっとしている
跨がるという事は素肌の背中に触れている状況なのだが彼が動く度に筋肉が動きドキドキしてしまう
自然と頬が緩むが彼に目撃される事は無いので存分ににやけておく
「何回とか決めてるんですか?」
「一応ね。」
「ふーん」
彼が動く度に動く筋肉をベタベタ触ってみる
彼の表情が見えないという其れだけで随分気軽に触れられる事に気が付いて背中に回された腕の力こぶにも触れてみた
「イルミさんは屈強ですね!」
「………。」
弾む声に彼の無言が刺さるが気にしないでおく
洋服越しには線が細く見える彼だがその実、全てがしっかりとした筋肉に覆われているのだ
その後腕を変えて腕立て伏せを続ける彼の背中や腕を堪能した私は終始楽しかったが筋トレを終えた彼の表情は心底呆れ果てていた
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昼食を済ませておやつ時
私はドーナツをちゃぶ台に置いた
「太るよ」
なんて毒を吐く彼は仕事道具の針をお手入れしていたが、おやつの登場にその手は止まり、
真っ直ぐお盆に乗ったドーナツへ伸びた