第134章 迷子のクリスマスツリー
随分並んで乗り込んだコースターは宙吊りの様な形をしたまま冷たい空気の中を滑走する
なんでもプテラノドンに背中を掴まれて空を飛ぶというのがテーマらしく
本当に空を飛んでいる様に振り回されて全身で受ける風は爽快に駆け抜け、歓声を上げている内にあっという間に地面に降り立った
「凄かったですね!なんかブンブン!!!って感じ」
「うん」
興奮気味の私とは相反して瞳だけを輝かせた無表情な彼を見上げる
本当に一瞬の空の旅だったが鳥はこんな風に自由に飛べるのかなぁなんて思っていると
すっと瞳を細めた彼は私を見下ろし私の髪を徐に整え始めたので一気に羞恥が込み上げる
あれだけ風に吹かれたのだから相当ボサボサだっただろう…………
………まぁ………寝起きのボサボサを毎日見られいるのだし……と考えて気を持ち直した
__________"
私は今非常に焦っている
というのもフライン○ダイナゾーで間抜けに口を開いた写真を購入しようと彼と一緒にお土産屋さんを訪れたのだが記念写真を購入している間に彼の姿が忽然と消えたのだ
始めこそ店内の何処かにいるだろうと焦りもせずに悠長に探していたのだがどうも見当たらず
店を3周した頃には不安で一杯に成っていた
人で混み合うテーマパークではぐれるなんて致命的だ
店外へ出て辺りを見渡すが彼の姿は見当たらなかった
彼は何処に居ても異質で溶け込む事は無く目立っている
遠くに居たって其れなりに見つけ易い筈なのだが……私の目は忙しなく動くが視界に彼を捉えられない
スマホから彼へ通話音を鳴らしながら今朝の事を思い出していた
彼は今朝充電が無いと言って家にスマホを置き去りにしていた
何時何処に居ても電波で繋がるこの時代に端末を携帯していない彼に少々苛立ちすら覚えながらも無意味なコール音を終了させる
「何処行ったんよ………。」
ふと思い出したのは福井県を訪れた際の彼の行動だった
彼は私とはぐれても尚独りで東尋坊観光を遂行していた
私は驚きの余り戦慄していたが今回だってその可能性は否めない
常人とは異なる感性や概念を持つ彼がどの様な事を考えるかは全く見当も付かない……故にその行動も私の予想の斜め上にぶっ飛んでいたりするのだ