第134章 迷子のクリスマスツリー
お目当てのポップコーン屋さんには行列が出来ていたが何とか購入して私はとにかくシャッターを切っている
「………沙夜子さ、ポップコーンが食べたかった訳じゃ無いでしょ」
「いや、食べたいには違いないんですけどね!」
呆れた表情を浮かべる彼の首からはミニオ○のデザインが施されたポップコーンバケツ
普段クールビューティーな彼にこのバケツを下げさせたかったのもまた事実だ
魂胆は読めたとばかりに眉をしかめる彼を一通り激写した私はぐいぐい引っ張る彼に連れられてまるで子供の様に歩いた
映画ジュラシッ○パークの舞台をモデルにしたエリアは植物が茂り冒険心を擽る音楽が流れていてワクワクする
そんな中長蛇の列が出来たアトラクションへ彼は吸い込まれる様に加わった
ザフライ○グダイナゾー
以前トラブルがあり、運転中に急停止したなんてニュースもあったが問題無く運転しているので平気だろう
「イルミさんはジェットコースター好きですね!」
「うん。沙夜子も好きでしょ?」
「はい!ひゅんひゅん感がたまりません!」
言った後に漠然とした疑問が浮かび彼を見上げる
「イルミさんってジェットコースター乗らんくてもひゅんひゅん出来るんじゃないですか…?」
彼の脅威の脚力を持ってすれば走っただけでジェットコースターのスリルを味わえるのでは無いかと思ったのだが
「自分の足で走らないから予想が付かなくて面白いんだよ」
と言われて納得する
というより彼の全力疾走はやはりジェットコースター同様の浮遊感があるのかと思うと次元が違い過ぎて頷く事しか出来なかった
開園直後とは比べ物にならない人の多さに待ち時間も自ずと長く成り会話も無く只ポップコーンを頬張りながら列に続く
周りのカップル達はイチャイチャしながら会話を楽しんでいるが
私達は会話を交わしたりする事も無くポップコーンを口へ運び時折ポツリポツリと話す程度で後は心地好い沈黙
生活を共にしているとは其だけ時間を共有しているという事で、私達特有の空気感という物が知らず知らずの内に出来ている事に気付き何だか染々としてしまったりした