第133章 遊園地と浮かれたカチューシャ
開園の合図の様に流れ出した音楽と列の歩みに入場ゲートを潜る
暫く歩けば象徴的な大きな地球のモニュメントが見えて彼は其れに興味を示した
只くるくる回るモニュメントを無表情に眺める彼が何を思ったのか解らないが立ち止まった彼を写真に納める
他の人々も立ち止まりモニュメント前は記念撮影の人々で賑わいを見せた
「イルミさん!」
呼び掛ければゆっくりと振り返った彼に笑みを向けて
「行きましょう!」
私が言えば当然の様に私の隣に並び歩き始める彼
彼の歩幅は本来広く歩き姿すらも絵に成るのだが
そんな彼が私の歩幅に合わせて速度を落とし連れ立って歩ける事に幸福感が広がった
入場すると先ずやって来たのはハリウッドエリア
1930年代のアメリカをモチーフにしたエリアはテーマパークらしく華やかで賑わいを見せていて
やはり季節柄クリスマス雰囲気のパーク内は見渡せばカップルが殆どを占めていた
隣の彼をチラリと盗み見る
何時もの距離感を保つ事が随分もどかしく感じたが口に出す勇気は無かった
「何から乗ります?」
「あれ。」
私の問いに即答した彼は真っ直ぐにパークの目玉のひとつであるアトラクションを指差した
ハリウッドドリーム○ライド
開園後直ぐのために待ち時間を表示した電子版はこのアトラクションにしては短い待ち時間を表示していて私達は早速列に加わった
「これ音楽聴きながら走るんですよ!」
「へぇ。これCMで見た事ある。」
「あー、良く流れてますよね!」
なんて他愛ない会話を繰り広げている内に列は進む
待ち時間中、乗車方法を説明した映像がくどい程繰り返し流れているのだが彼は其れを真剣な表情で眺めていた