第132章 夜道の気配
むやみやたらに出歩くな。
この酒を買いに行くリスクと我慢して安全を選ぶのとどちらが良いか。
夜間の外出時は報告、連絡、相談を怠るな。
等、本当に反省する事ばかりだった
二時間程経ってピリピリに痺れた足をわざとらしくバシバシ叩いた彼は転げて悶絶する私に
「次今みたいな事が起きたら殺すからね、相手を。」
恐ろしく冷たく、そして恐ろしく美しい表情を浮かべた
一瞬にして見惚れた私は言葉の意味を理解する前に肌がゾクリと粟立つのが解った
ハイボールを注いだグラスをちゃぶ台に置いた後に頬杖を付いた彼
その表情に先程見せた無機質な雰囲気は無く、すっと細められた瞳は私を見下ろす
「何時まで転がってるの。お説教は終わりだよ。してほしいならするけど」
「いえ………、ご指導ありがとうございました!」
「ふざけてる?」
「真剣です!」
「………あっそ」
「………ご心配おかけしてすみませんでした」
「……うん。………どうせ飲むんでしょ。」
「………はい」
「乾杯」
「…あ、…乾杯です!」
いつの間にか2つのグラスに注がれていたハイボールをカチンと鳴らすと部屋には何時も通りの平穏な空気が漂った
「夕飯……随分多かったね」
「あ、それは!」
なんて会話を弾ませ始めた私達はぬいぐるみもそのままに深夜迄グラスを傾け続けたのだった