第132章 夜道の気配
「あの……ほんまに彼女とかじゃ……「………はぁ………沙夜子は馬鹿だね。俺に彼女なんていないに決まってるでしょ、沙夜子の周りに俺は彼氏として紹介されてる訳だしリスクしか無いだろ。………まさかこの女の話し信じてた訳じゃないよね?」
瞳を細めて心底呆れた表情を浮かべた彼に首をブンブン横に降る
「大体、こんな女知らな………あ。」
「……!?」
無表情だった彼が突然間の抜けた声を上げたので見遣れば
「そう言えば現場に弁当売りに来てたっけ、俺は買ってないけど。………こんなヒステリック女、街で擦れ違いたくも無い。」
彼は吐き捨てる様にひどく冷たく言った
その言葉が妙にグサリと刺さったのは女性も曲がりなりにも彼に好意を抱いている、という部分では同じだからだろう……
………決して……決してこの様な事は許され無いので同情はしないが。
無断で女性のスマホを弄っていた彼は「7つ先の駅からわざわざご苦労だね。」なんて言った後に荷物と共に玄関外に女性を転がし玄関扉を閉じた
………この寒空の下、風邪を引かないだろうかとチラリと思ったが部屋に入れる気は更々無いので口には出さなかった
………なんてったって殺されかけたのだから高熱を出せば良い………くらい思っても良いだろう……
なんて考えていると座椅子に腰掛けた彼は平然と夕飯を食べ始めた
「突っ立って無いで座れば?」
「あ、はい」
頬袋を作った彼に促され隣に正座すれば
「なにこれ。何してたの」
ちゃぶ台を囲むぬいぐるみに眉を潜めた彼
「………イルミさんいてないから寂しくて皆とパーティーを……」
「………人形と?」
「………はい……」
彼の指摘に汗をかく
俯瞰で考えずとも異様かつ頭がおかしい
「馬鹿じゃないの。」
「………はい………」
無表情に言った彼に俯いてしまうが言い返す言葉はどう足掻いても見つから無かった
暫しの沈黙の後にカサリと袋の音がして目線を上げれば彼は其れを真っ直ぐ私に手渡し
「じゃあ説教を始める。」
と言ってボジョレー・ヌーボーを傾けた