第16章 【異世界での家探し】
確かに台詞の部分は見たことも無い文字が使われ見ていないと解らない様な詳細な描写まで書き込まれていた
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そして俺は異世界へやって来た
今度の依頼を無料奉仕するという交換条件付きで。
異世界、というからもっと違う形状の世界が広がっているものとばかり思っていたが
違和感はあるものの普通に人が行き交い活気もある街が広がっていた
身を隠すならやはり目立たない場所が良いと思い移動を開始した。
栄えてはいるが、最初に居た街より人が多い訳では無い
辺りは暗くなり建物に明かりが灯る
(……此処で良いか)
辺りを見渡すとえらく年季の入った小さな6部屋編成のアパートを見付けた
一階から順に中を覗いてみる
ひとつ目の部屋には老夫婦が住んでいる様だ
(途中で死なれたら面倒だしパス)
二つ目の部屋にはミルキの様な男が住んでいた
部屋中に転がったペットボトルや缶、ティッシュ
自身の掲載されているコミックは床に転がっているが
(部屋汚過ぎ。パス)
三つ目の部屋には少し歳上の女が住んでいた
部屋の大半を埋めるバッグや洋服から夜の仕事を思わせる女だった
やたらに香水を振り撒く姿
(香水は苦手だけど今までよりマシ……保留)
二階も覗く
四つ目の部屋は学生らしい男だった
部屋も綺麗だし、至って平凡
(さっきの女より……)
何て思っていたらカップルで住んでいる様で熱いキスを交わしている
(……パス)
五つ目は同年代くらいの赤い髪をした男が住んでいた
ギターを掻き鳴らしつつ絶叫している
(ムカつく、パス)
六つ目の部屋には平凡な女が住んでいた
一人真顔でテレビを眺めて居たかと思うとニヤニヤしつついきなり踊りながらキッチンへ消え食事をしている
(変なの……)
夜が明けるまで観察を続ける
泣きながらテレビを見ていたかと思うと風呂から素っ裸で上がり暫く寛いだ後にボロボロの服を着てコミックを読んでいる
自身も掲載されているものだった