第16章 【異世界での家探し】
仕事をしくじった"殺る"と気取られてしまったのだ
ターゲットと目が合う
(相当の手練れだね……厄介)
自然と自身の表現が歪むのが解った
殺し屋の長男として生まれ、血ヘドを吐く様な訓練にも耐えてきた
しかし、才能というのは残酷にも自身には無く唯一出来る事は人一倍の努力だった
ただ、強くなり一族の安泰を望んだ筈なのに
その為に強くなった筈なのに仕事中に気取られる等言語道断だ
瞬時に身を引き逃げた
殺し屋は暗殺こそ全て
依頼人、そして家族に迷惑は掛けられない
ゾルディックの者と解らぬ様顔を変形させていて正解だった
しかしここで自身が命を落とせば同じ事
(俺の後は家族だ)
どれだけ逃げただろうか
知り合いのアジト迄来ていた
退くタイミングで刺されたナイフに念は込められていなかったが鳩尾に深く刺さっていた
血が滴るのを避けるため今までそのままにしていたが物陰から辺りを見渡し抜き取る
思いの外血が吹き出した
自身で縫い付け応急処置を行おうとしていると知った気配が現れた
「イルミか?」
「……クロロ」
良き顧客である男だった
彼も異質な存在な為血液に驚きはしないが仕事を完璧にこなす自身が痛手を抱えている事に驚いていた
「どうしたその傷」
「ターゲットにちょっとね」
「………来い」
彼の後に着いて行くと女が傷口を縫い付けてくれた
そしてターゲットについて話した
暫く身元が判明しないよう身を隠したい旨を伝えアジトを隠れ家にしたいと伝えたいのだが
彼は"異世界へ逃げれば良い"と言った
「異世界?あるわけ無いでしょ、馬鹿なの?」
「馬鹿じゃないっ!!」
彼が言うには異世界へ人を飛ばせる能力を持つ奴がいるそうだ
完全に身を隠せるが最短で一年……
「胡散臭い話には乗らないよ」
「俺は行った事がある。これが証拠だ」
彼の手には見慣れない文字で書かれたコミックが何冊かあり、表紙にはキルアの友達とかいうゴンが載っていた
中を覗けば驚く事にハンター試験の内容や顔を変形させた俺まで描かれていた
「何これ」
「その念能力者は此方と違う世界を行き来できるらしい。だから俺たちを題材に漫画を描いてるんだと」
「………」