第132章 夜道の気配
「………?!?!」
彼の家………彼とは間違い無くイルミさんで………
「何か言えや!!!何で私の彼氏と住んでるんか聞いてるねん!!!」
可愛らしい顔立ちの女性は目一杯表情を歪めて叫んだ
「………え………」
女性は今何と言ったのだろう………。
……彼氏………?
「おい、人の彼氏の家やろ。出て行けや」
「………ここは私の部屋です……」
ポツリと言葉が出た事に自分でも驚いた
「は?!彼女おるって解ってて同棲してるって事……?」
女性は私の言葉に口元だけに笑みを浮かべてゾッとする程憎しみを湛えた瞳で私を見上げた
しかし怯えとは裏腹に込み上げる気持ちは女性に屈する事等許さなかった
「貴女ほんまに彼女なんですか?!私達は約一年同居してます!!で、ここはずっと私の部屋です!!お引き取り下さい!!」
負けず劣らずの声量で叫べば女性の表情はまた歪み途端にしゃがみ込んで金切り声とも取れる声で叫び出した
思わず耳を塞ぎたくなる声は悲痛に響き、平穏に話し合い等出来ないのだと理解した
扉を締めようにも女性が障害となって閉じられない
私は咄嗟に電話を掛けた
未だ髪を振り乱し金切り声を上げる女性はいつ何を仕出かすか解らずトイレにこもりしっかりと鍵をかけた
三回目のコール音
バクバクと騒がしい心音
「………お願い……っ……」
『もしも「もしもしイルミさん……早く帰って来て……ストーカー……女の人……で……玄関締められ……『直ぐ帰る。今沙夜子は何処にいるの』
「……トイレ……『鍵は』
「閉めた『解った』
彼の声を聞いた途端に全身が震えだして力無く崩れる