第132章 夜道の気配
ちゃぶ台の上にはホカホカ出来立ての夕飯……張り切って作った為に少し品数が多くて
彼と乾杯する為に並べたワイングラスが寂しく見えた
大体前田とは何者だ………
彼は語らない故に聞かなければ何も解らない。
仕事をしているのだから当然私の知らない交友関係があって当然なのだが
初耳の人物に予定を狂わされた事に多少なりとも面白くないと思ってしまった
「先に食べていて………か……。出来立ての方が美味しいのに……」
呟きは静かな室内に響き
「さ、いただきます!」
空元気に放った言葉は更に寂しさを際立たせた
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時刻は22時過ぎ
ボジョレー・ヌーボーの瓶を覗けば半分程残っていたが彼に残しておくことにした
………しかし………飲み足りない。
冷蔵庫を覗くがアルコールの類いは無く上着を羽織り近所のコンビニでハイボールを追加購入する事にした
扉から外へ出れば冷えた夜風が火照った身体をキンと冷やして体温を奪う
一人で飲んでいた為に随分アルコールが回るのが早く、ふわふわと身体が宙に浮く様な感覚に足元を見下ろせば絵に書いた様な千鳥足だった
酔っ払ってアルコールを買いに行く……何だか懐かしく思った
そう言えば彼がやって来てからこうして夜に私情で出歩く事は無かった様に思う
暑いくらいに火照った身体から吐き出される息は白く浮かんで消えた
コンビニで目的のハイボールを購入しておつまみも購入した
腕に掛けた袋をカサカサと鳴らしながら鼻歌を歌っていると背後に気配を感じて振り返る
「…………」
視界の中には自身一人の影だけが映り只のサラリーマンやOLさんだろうと想像していた為に僅かに胸が騒いだ
普段なら気に成らない背後
しかし、以前彼に特別防犯講座を受けた事がチラリと頭を過ったのだ