第131章 彼のマイブーム
発した言葉はそのまま私の気持ちだった
元々何にも執着しない淡白な彼が自ら行きたい、と思う場所に行きたいと思った
そして希望が決まらない限り大まかな予算も立てられないのも事実で
急かす気は更々無いが、こうして確実に来る未来の話しを彼と出来る今を少しでも実感したかった
「北海道って雪国だよね。」
「はい!私達が行く時は銀世界ですよ!」
「うーん」
彼は全く考えていなさそうな間延びした声を漏らしながら自らのスマホを操り始めた
「少し時間がかかるから先に乾かして来たら?」
なんて此方を見ずに言った彼
肩に掛かったタオルは自身の髪から滴る雫で濡れていて、彼の言葉に甘える事にした
時間がかかると言う事は其だけ真剣に観光地を吟味してくれるという事で
其だけで私の頬は簡単に緩み髪を乾かしながら鼻歌を歌ってしまった
すっかり乾いてボリューム満天の髪を軽く纏めて彼の隣に腰を下ろすと
彼は悠々とした所作で手にあるスマホを私に突き出すと
「適当に選んだけど」
と短く言った割には何故此所に行きたいのかという理由をキッチリ教えてくれるので思わず笑ってしまった
「……突然何。」
「いえ、他の候補もありますか?…………っいたいです……」
怪訝な表情を浮かべた彼は私の頬を摘まんだ後にまたスマホを差し出してくれた
この日私達は布団に入ってからも広い大地に思いを馳せて会話は止めどなく
すっかり冷え込んだ空気を初めて穏やかな気持ちで受け入れる事が出来たりした