第131章 彼のマイブーム
「沙夜子は軽いよ」
「………軽くないです」
「軽い」
「イルミさんにとっては軽いかもしらんけど……軽くないです」
「沙夜子の体重当てようか」
「……だめ!!降ろしてくださいッ!!!」
「…………」
瞬間に地に着く足に安堵してへたり込んだ
未だ立ち上がったままの彼を見上げる
「………来月は北海道旅行に行きます………せっかくやし………今以上太りたくないです……」
彼はこの乙女心を理解出来ない様で納得した様なしていない様な微妙な表情を浮かべたが追及してくる事は無く只ジュージューと生地の焼ける音が耳に届いた
そんな中沈黙を破ったのは彼だった
「……要するに沙夜子はもうたこ焼きは食べないって事だよね。」
的を得た言葉にズキリと良心が痛んだがゆっくりと頷いて真っ直ぐ彼を見上げれば無表情な彼と目が合った
別に太らないなら食べる。食べ続けるのに……………なんて考えていると
「…………解った。今日で終わりにするから今日は一緒に食べようよ」
「…………っ」
(一緒に食べようよって……可愛すぎるっ……!!!!!!)
彼の可愛いらし過ぎる言葉に平然を装い返事をした私だが内心ニヤニヤが止まらない
名高い暗殺者
その彼が「一緒に食べようよ」なんて………そんなの………そんなの………可愛い過ぎて尊い………。
「謹んで食べさせて頂きます」
なんて言った私は正座してちゃぶ台に向き直した
恐ろしく可愛らしい彼のお誘いに私が抗える筈も無い。
焼き上がったホカホカのたこ焼き
やはり飽きているには変わり無いが一緒に食べようよという言葉は私にとって魔法の様なもので
一口頬張った熱々のたこ焼きを久しぶりに美味しいと感じた