第130章 腰は大切
大きな手にしっかりと握られたボロボロの布は間違いなく私のパンツで私は恥ずかしいのか泣きたいのか解らなくなって声が震えた
動揺の余り固まる私とは裏腹に落ち着き払った彼はサラリと私を小脇に抱えて座椅子に座らせる
一時的に羞恥を上回る痛みに唸り声を上げたが嫌な汗が浮かんでいるのは決して痛み故の物では無かった
彼の手にあるパンツの事で頭が一杯なのだ……。
妙な沈黙の中
呆然と彼の手をガン見する私に彼は実に悠長な所作で持っていた下着を広げた
突然の行動に動揺を隠せない私とは相反して無表情な彼は溜息を付くと
「これ、穴が空いてるから捨てた方が良いよ」
単調に言った
「っ…………はい」
穴が空いている事は以前から知っていた。しかし履き心地が良くずっと捨てずにいたのだが彼に指摘されてしまった以上捨てないとは言えなかった
大好きな人に目の前で下着を広げられ穴が空いてるなんて指摘された私は羞恥を越えて灰になりそうなのだが
何の恥ずかし気も無くパンツを捨ててしまった辺り彼は今の私の心中を察する気は無いらしい
そして気になるのが他の下着は彼的にセーフだったのか……という事で。私は絞り出す様に聞いた
「あの……他のは大丈夫でしたか……」
「?うん。紫とベージュね。」
灰になりそうな私に止めを刺した彼だが
「何時も思うんだけどさ、もっと女性らしい色味も買った方が良いんじゃない?」
凄まじい精神攻撃をして平然とコーヒーを飲み始めた
……何時もとは……何時も干している物が目についているという事。
やはりベージュ等の色味は地味に感じているという事実………
「まぁ趣味趣向は個人の好みだから良いんだけどさ。」
なんて事も無さ気に言った彼の言葉に全買い替えを決意した。
静かに下着の通販サイトを見ていた隣で
「ピンク」
と呟いた小さな声を私は聞き逃さなかった
新たな下着が届いた暁にはなんだか悔しいので堂々と目の付く場所に干してやろうと思う……