第130章 腰は大切
「満足した?」
溜息を付きながらちゃぶ台に頬杖を付いた彼は呆れた表情を向けた
「………えっあ、はい……」
「……そう。」
「……イルミさんテレビに集中してたからずっとスルーしてるんかと………」
言いながらテレビ画面をチラリと見遣れば其所には通販番組では無く情報番組が流れていて疑問符が浮かぶ
「………あれ?……通販……」
彼がチャンネルを変えた素振りは一切無かった
彼は其れでも集中してテレビを見続けていた筈だ……
しかしテレビ画面からは彼が興味無さげなファッションチェックが流れていて更に疑問符が浮かぶ中
「通販は沙夜子が耳朶触ってる時くらいに終わったかな」
と、しれっと言われてしまった
そして私は気付いた
先程の「満足した?」という言葉から彼は私の行動にじっと付き合ってくれていたのだと
途端に恥ずかしくなり顔が熱くなる
「……すみません」
彼への謝罪は随分小さな声に成ってしまった
「別に。」
………彼は敢えて無反応だったのだ……其れを知らずに今ならテレビに夢中だからとベタベタと彼に触れてしまった……
軽率過ぎる……自分……。
未だ私を真っ直ぐ見据える彼の視線を横顔に受けながら俯いていると
「俺買い出しに行くから、トイレ行っときな。」
突然そう告げた彼は今朝同様私を軽々小脇に抱えた
心構える前に唐突に体制を変えられた事で迸る激痛に私は声を上げた
「痛い痛い痛い痛い痛い………っ!!」
彼の心遣いなのは解る。
自身が居ない間に催すと大変だろうと考えたのだろう……解る。優しい。
しかし痛みに耐える心構えが出来るまでの私の返答は待てなかったのだろうか………
なんて、無事にトイレを済ませて再び座椅子に運ばれた私は颯爽とスーパーへ繰り出した彼の背中を見送りながらぼんやり考えたりした
そしてまたもやリモコンは届かず私は全く興味の無い番組を見ていた
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「はい、出来たよ。」
「ありがとうございます!」
「うん」
彼が買ってきた食材はまさかのたこ焼き粉と其の材料だった