第130章 腰は大切
……さすがにテレビを見ている彼の瞼に触れると叱られそうなので顎に手を添えた
『やぁ、ぼくぁイルミってんだよ!よろしくなっ!』
添えた手を動かせば下唇が僅かに動いたので勝手にアフレコしてみる事にしたのだ
イメージは"わんぱく"である。
『夏休みはめっちゃんこカブトムシ取って海の黒んこ大会で優勝したオレっち!冬は何しようかな~』
自分でアフレコしておいて吹き出しそうに成ってしまった
彼が馬鹿みたいにカブトムシを捕まえている姿や肌を焼いて黒んこ大会で優勝している姿をありありと想像してしまったというのと
今の自身を客観的に見た場合相当イカれた事をしているなぁと感じた事が原因だった
それに彼はわんぱくとは縁遠く、表情と台詞があまりにもミスマッチな事も私をニヤニヤさせた
(………あかん。……自分でやって自分で笑うとか……痛いやつやん……)
笑うと腰に響きそうなのでそっと手を離す
……やはり彼は無反応でスルーだった
という事は顔のパーツに関しては私が触れても平気らしい事が解った
まぁ、瞼は叱られたく無いし唇は勇気が無くて触れられ無いが良しとしよう
次いで長髪を耳に掛けた事でしっかりと見えている首筋に目を付けた
首筋と言っても闇雲に触れるのは何と無く勇気が要るので控え目に指先で喉仏を触ってみた
彼は中性的な顔立ちをしていて身体さえ見せずにお化粧すれば完璧な美人さんに成る
しかし横から見ると女性とは違いしっかりと喉仏が存在するのだ
彼は間違い無く男性なので当たり前なのだがまじまじ見てみると思いの外立派な気がした
………立派………?
喉仏に立派という概念が存在するのかは解らないが、彼の顔立ちからすれば随分と男性であると主張している様に見えるだけかもしれない………
何と無く自身の喉仏を触ってみるとやはり目立たないくらいの大きさだ
そして発覚したのは喉仏を触るとちょっと苦しくて、少し吐きそうに成るという事だった
現に今私は自分で触っておいて、うえっと成った。
………しかし彼は無反応……
彼に吐き気を催すという機能は存在しないのだろうか………?
汗もかかないし足音もしないのだし……彼なら有り得るかもしれないなぁ……なんて一人納得して頷いていると