第130章 腰は大切
「今ならなんと!」なんて勿体振った台詞にキラキラと輝く瞳
彼がねだっても絶対に購入しないが……とにかく可愛らしいので控え目に頬へ手を伸ばした
指先でそっと頬を突っついてみると彼はチラリと此方に視線を向けたが直ぐにテレビ画面に戻された
(…………めっちゃ夢中やん………)
指先で何度か突っついてみたが彼は一度此方を見たっきり何の反応も示さない
彼が他人に触れられるのを嫌っていると知ったのは沖縄旅行の際だった。私は生活を共にしているからか随分初めの頃から彼に触れていた様に思う
今も簡単に触れてしまう指先は彼に信頼されていて触れて良い人間だと認識されている証なので嬉しい反面無反応だと少しだけ寂しいと思ってしまった
立場が反対ならば私は確実に挙動不審に成っているだろう
………彼は何とも思わないのだろうか……
私の思考は即座に好奇心へ切り替わっていた
頬を突っつくのはOK……ならば何処までならば彼はポーカーフェイスにスルーを決め込むのだろうなんて考えてしまったのだ
手始めに長い黒髪を耳に掛けてみる
サラサラの手触りが指を滑って彼の輪郭がはっきりと見えたが今度はチラリとも此方を見なかった
其ならばと耳朶をやんわり摘まんでみる
(………あ、柔らかい……)
初めて触れた彼の耳朶は柔らかかった
耳朶が硬い人なんてこの世に居るのか解らないが、引き締まった肉体を持つ彼の身体中でこんなに柔らかな場所が存在するなんて……と少し感心してしまった私は暫くフニフニと耳朶を触っていた
次いで目を付けたのはすらっと高い鼻だった
イタズラ心から小さな小鼻を指で押して鼻の穴を塞いでみる
……………無反応………。
ならばと鼻筋をなぞって往復させてみるがこれもスルーされてしまった