第130章 腰は大切
私は無い頭を捻って考えた
プランA
痛みを無視して立ち上がり最悪トイレから動けなくても構わない捨て身作戦
プランB
イルミさんが起床するまで此所で待機、起床と同時に扉を開いてもらい便座へ座らせてもらう他力本願作戦
プランC
老人ばりのスローモーションで無理無く中腰に成りトイレへたどり着くじっくり作戦
…………どれも無理だ。
私の額には脂汗が浮かぶ
そもそもスタートがMAXなのだ。タイムリミットは確実に近付いている
気が付けば私は叫んでいた
お漏らしするくらいなら彼の力を借りる事を選択したのだ
「イルミさん!起きてください!!!漏れる!!!」
「………んー」
寝起きが悪い彼だが私のただならぬ声色に一発で目を覚ましてくれた事に心底感謝した
背後で布団が動く気配がして
「………何してるの」
彼は寝起き特有の低い声で言った
「ギックリ腰になってしまって!トイレ行きたいけど戸開けられへんし便座に座れません!ギックリ腰!!解りますか!?!?」
「……知識としてはね」
焦りから早口に成る私とは裏腹に欠伸混じりに言った彼は這いつくばる私の傍でしゃがみ込むと
「で、俺は何をすれば良い訳?」
と可愛らしく小首を傾げた
しかし今彼のキュートさを誉める余裕を持ち合わせていない
「トイレの戸開けてください!私を便座まで運んでください!!!早急に!!!」
一気に捲し立てた私を横切りトイレの扉を開いた彼は軽々私を小脇に抱えた
瞬間襲う激しい痛みに唸り声を上げた私だが彼に便座に座らされ
普段絶対に有り得ない場所で彼と向かい合っている事に羞恥が込み上げた
「ありがとうございます!すみません!扉閉めてください!」
「………うん。」
誠に勝手ながら一刻でも早く彼を追い出したかった私はぐいぐい背中を押した
彼も其れに抗う事無くすんなり出て行き扉はパタンと閉じられた
……まぁ抗う理由が見当たらないので当たり前なのだが
無事にトイレを済ませ事無きを得た。私一人だったなら最悪の大惨事に成っていただろう………
そして本当に申し訳ないが再び彼を呼びつけて座椅子に座らせて貰った訳だが私は既にゲッソリしている
度重なる激痛は私の体力を奪い、何をするにも彼に頼まなければならない心苦しさに早くも嫌に成っていた