第129章 缶の箱と段ボール
……実のところ、私と元彼は嫌い合って別れた訳では無くお互いに社会に出た事ですれ違い、価値観が合わなくなったのだ。
自由奔放な私に着いて行けないとフラれてしまったが
実際は私が元彼としっかり向き合わなくなった事が原因であり、別れの言葉は元彼が言ったが、態度では私が振った様な物だった。
最後に別れの挨拶をした際とても愛しそうに抱き締められた事を今でも覚えている
その為に捨てられず箱に封印していたのだが…………流石私である
すっかり忘れていた………。
固まる私を他所に彼は手紙に目を通し、その後プリクラを眺めた後に
「……で、これは取って置くの?」
無表情に言った
真っ直ぐ私を見据えた彼はあからさまに無表情を装っていて
黒々とした瞳は私の真意を測っている様に思えた
彼は普段から無表情だ。
何が違うと言われてしまえば決定的な違いは無い……只、彼の纏う雰囲気が冷たくなった気がするのだ
箱に入っていた物は未練も何も無い品だ
只、嬉しかった。
その気持ちを閉じ込めた箱
私は真っ直ぐに彼へ笑顔を向けた
「捨てます!」
彼は僅かに眉を反応させた後に箱を閉じて私に手渡してくれた
彼の些細な気遣い
思い出の品の引導は私に手渡されたのだ
私は清々しい気持ちで手放した