第129章 缶の箱と段ボール
次いで取り出したのはアクセサリー類の入ったジュエリーボックス
開いた箱にはピアスや指輪が入っていて決して少なく無い数に彼は瞳をくりくりさせながら見ていた
小さなアクセサリーボックスを選別するのに人手は全く要らないが律儀に隣に座っている彼を可愛らしく思ったりした
次いで何が入っているのか全く身に覚えの無い段ボールを引っ張り出す
中身はぎっしり重く苦戦する私に代わり彼は軽々段ボールを引っ張り出した
そして以前の天袋の出来事を彷彿とさせる所作で私より先に段ボールを開いてしまった彼に次いで中を覗くとそこには幼い頃に描いた絵なんかが収納されていた
「おー懐かしいです!」
「…………?」
彼は僅かに眉を潜めていて"なにこの落書き"とでも思っているのだろう
所詮幼稚園児が描いた絵
クオリティーが低いなんて問題じゃない。
古く成った紙は端がぼろぼろに成っていて過ぎた年月を物語っている
色画用紙いっぱいに描かれたゾウと思われる絵
ページを捲るとまた違う絵が出てくる
「これ私が四歳の時に描いた絵です!」
「四歳……」
彼は私の言葉を聞いて繁々と眺め始めた
只の落書きでは無いと伝わったのだろう
先程迄の怪訝な眼差しは無くなり「上手に描けてるね」なんてお褒めの言葉迄頂いた
どうやらこの段ボールは思い出の品が詰まっているらしい
ページの最後には当時の手形と足形があり、当然ながら今とは全く大きさが違っていて思わず手を伸ばせば
彼も同じ様に手形に手を重ねた
「大きく成ったね」
その声色があんまり優しいので私は只彼の横顔を見ていた
次々出てくる絵は小学生に成り、時代は巡り高校生の頃のノートが出て来た
ろくにノートを取っている痕跡も無くページには無数の落書き跡
「………確かこれ数学のノートじゃなかったっけ……」
「……あはは」
彼の指摘は最もだ。私の頭脳の足りなさが伺えるノートを彼は次々捲って行く
そしてノートも中盤に差し掛かった時彼が捲ったページには彼の絵がいっぱいに描かれていた
「………。」
「………。」
チラリと此方に横目を寄越した彼にとりあえず作り笑いを浮かべる