第129章 缶の箱と段ボール
何度も言う様だが本棚にある漫画は幾度と無く読み返した
其れを下らないなんて言われると何だかモヤモヤしてしまい思わず反論してしまいそうになったが
彼は意見をくれただけなので言葉を飲み込む
「………電○デイジーだっけ。あれも捨てたら良いよ」
「………捨てませんよ……売ります……」
「……どちらでも良いけど。」
チラリと此方を向いた彼は無表情に言った
そりゃそうだ。彼からしてみればどちらでも良いだろう
結局彼に意見を仰いだって決めるのは自分なのでまた本棚に向かい合う
この作品はどんな結末だっただろうか、これを本当に手放して良いのだろうかと悩む内に気が付けば私は漫画を読んでいた
「……沙夜子、手が止まってるけど」
「……んー……」
「掃除だよね?読んでるでしょ。」
「あ、すみません……」
彼の呆れ声にはっとする
手に持っていた漫画は三巻に成っていた
彼はどうやら私が夢中でページを捲っている間も黙々とキッチンを掃除してくれていてもうすぐ終わりそうな雰囲気に慌てて漫画を吟味した
人間焦れば行動は早いものであれだけ悩んだ選別だったがあっという間に本棚は一列綺麗に空きを出した
そしてすっかり忘れていたが私が向き合う本命、押し入れがまだ残っていた事にげんなりして立ち尽くす
「手伝ってあげるから早くしなよ。」
そんな私の背中に溜息混じりに言った彼
振り返れば長髪を後ろに纏めた彼はその手にゴミ袋を持っていた
キッチンをすっかり綺麗にしてくれた彼だがどうやら本当に手伝ってくれる気らしい
「ありがとうございます」
「別に」
彼のバックアップがあれば気の進まない押し入れの掃除も何だか楽しい物に思えた
先ず私が目を付けたのは洋服だった
一着ずつ取り出しては鏡の前で身体に宛がって見る
「………ちょっとデザイン若いでしょうか」
私が広げた服を畳んでくれていた彼に尋ねれば
「……そうだね」
しっかりと答えてくれたので直ぐにゴミ袋行きに成った
「この服見たの初めて」
「あー……今年は着てないです」
「どうする?」
「捨てます!」
なんて会話を交わしながら洋服を選別するのは思いの外楽しく洋服の入ったカラーボックスはあっという間にすっきりとした