第129章 缶の箱と段ボール
これまで何度か彼に掃除を手伝って貰った事があるので其の仕事ぶりを認知しているのだが
彼の清掃は正に完璧だった。
容姿端麗、頭脳明晰、料理も出来て振る舞いは上品で紳士的
その上掃除も完璧なんて、彼はスーパーマンだ
長く恋人も居らずフリーの私が彼と過ごした事により世の男性への目は確実に厳しい物に成ってしまっている事は明らかで
彼の影響で私は確実に婚期を逃しまくるのだろう………
まぁそもそも彼に想いを寄せている時点で明るい未来は望めない訳だが……
なんて考えながら優雅にコーヒーを飲む彼の横顔を眺めていると
「……寛ぎ過ぎだよ。早く終わらせよう」
と言って私がココアを飲み終わるのを待たずに彼はキッチンへ向かってしまった
そもそもこれじゃ大掃除をしようとどちらが言い出したか解らない。
一度掃除を始めた事で生真面目スイッチが入っているのだろうなんて考えつつ残りのココアを慌てて喉へ流し込み私は押し入れと向き合う
整頓が面倒で闇雲に詰めた荷物なんかを思い出して正直面倒で仕方がない
…………先に本棚を整頓しよう
全く何の解決にも成っていないが手っ取り早く済みそうな本棚から取り掛かる作戦に変更してぎっしり漫画の詰まった本棚に意気揚々と向かい合い直した
新しい漫画を増やすなら古い漫画を売るのが本棚をいっぱいにしない秘訣
最近欲しい漫画タイトルが数個浮かんでいたので何かを売ろうと紙袋を用意した
……しかし……漫画をこよなく愛して止まない私がそう簡単に売却する漫画を決められる筈が無かった
ひとつひとつタイトルを見て物語を思い返す
本棚に並んでいるのだから当然私の趣味趣向とマッチしている訳で何度も読み返した筈のものでもやはり手放すとなると惜しく感じてしまった
「………イルミさん!漫画減らそうと思うんですけど……何減らそうか悩みます」
今朝も漫画を読んでいた彼は此方に来てから本棚の漫画はHUNTER×HUNTER以外全て読破している
その為何かアドバイスを頂けないかと声を掛けたのだ
どうやらシンクを磨いていたらしい彼は一瞬顔を上げると
「ピーチ○ールだっけ。下らないから捨てれば」
はっきりとした声色で少女漫画のタイトルを挙げた
「下らない事は無いでしょ……映画にもなりましたし!……」