第129章 缶の箱と段ボール
11月17日土曜日
すっきりとした目覚めにスマホ画面を確認すると時刻は10時を過ぎた頃
ゆっくりと伸びをしていると
「おはよう」
座椅子に腰掛けて片手に漫画を持った彼は単調な挨拶をくれた
「んーっ!おはようございます」
布団から出ずに彼を眺める
寝間着として使っている大きめのロングTシャツにスウェット姿の彼は長い指でページを捲るとチラリと此方に視線を送った
「まだ眠るの?」
「いえ、ちょっとゴロゴロしてるだけです」
「……そう。」
すっかり寒くなった事で室内の空気は冷えていて布団から出たく無かったのと、彼の姿を只眺めていたかった
着飾る所か、逆に気の抜けた姿なのに彼の美形具合は変わらず本当に何をしても絵に成る事に感心してしまう
私の視線に慣れきった彼は早速気にする様子も無く漫画へ視線を走らせていて、せわしなく動く瞳が可愛い
暫く彼を眺めていたのだがふと彼の足に目が止まった
「イルミさん寒くないですか……?」
冷気が身体に伝わる板の間に靴下も穿いていない彼の素足は酷く冷たそうに見えたのだ
「別に。どうして」
漫画から視線を外さずに答えた彼に近寄り素足に触れてみるとやはり想像通り彼の足は冷えていた
「ほら!冷たい!」
なんて見遣れば彼は眉を僅かに反応させて溜息を付き
「………だから何。」
と呆れた表情を浮かべた
私の特技は彼を呆れさせる事だと自負している。
しっかり掴んだ大きな素足を緩く揺らした彼に逆らってぎゅっと握ると布団でぬくぬくしていた私の手から体温が移りほんのり温かくなった
「靴下はいた方が良いですよ」
「……解ったから離しな。」
「はい!」
私が手を離せば直ぐに段ボールから靴下を取り出した彼
前々から思う事なのだが彼は聞き分けが良い。
何でも素直に聞いてくれるし優しいのか、感心が無いので合わせる事に抵抗が無いのか……