第128章 ポッキーを意識する話
まさか、まさか、バレンタインデーを知らなかった彼からマイナーな"ポッキーの日"という言葉が出て来るとは思っても見なかった私は動揺に動揺を重ねた
「……ポッキーの日……?」
動揺を悟られぬ様に絞り出した言葉。下手に喋ってしまうよりしらばっくれた方が良いと判断した結果、咄嗟の疑問符だった
「あれ?知らないの?CMで言ってたけど」
彼の大きな双眼は尚も私の真意を探ろうとわざとらしく細められる
っ………冷静になるのだ私っ……!!別にポッキーの日が何だと言うのだ……私の頭が少々緩い為にポッキーの日=ポッキーゲームに直結しているだけで、ポッキーの日を知識として知っていても疚しい事は無い
「……あー、何か言うてましたね!知ってました!」
言いながら笑みを浮かべてみるが彼の静かな追撃は止まらなかった
「11日は過ぎちゃってるけど……てっきり俺に教えてくれるつもりなのかと思った。」
彼の言葉は別におかしな事等無い
今まで私は色々な文化を彼に教えて来たし、そう思っても違和感は無いのだが
……何故だろう……彼の表情から誠実性を感じない……
「……違います、すみません……。多分CM見てたから食べたかったんですかね?」
「……ふーん。」
作り笑いを浮かべた私だが彼はやはり納得していない。
………私の吐いた言葉に不振な点は無かった筈だが頬が熱いあたり私の顔はまだ赤く其れが原因なのだろう……
「じゃあ食べなよ。」
「……はい」
袋から取り出したポッキーを私の唇に当てた彼はイタズラに口元を歪める
彼の指に摘ままれたポッキー。
所謂あーんの状態で口に含んだのだが彼は未だポッキーから手を離さない
「……どうしたの?」
なんて事も無さ気な声を上げる彼だがこのまま私が食べ進めれば彼の指に唇が触れてしまう