第128章 ポッキーを意識する話
5つのポッキーは各々チョコレート、ストロベリー、抹茶、カフェラテ、アーモンドチョコレート味と全て種類が違うのだが
そもそも購入の際にこれだけ種類を揃えればどれか一つくらい彼が食べたい味があり、頂戴と言われるだろう事を見越している自分が気持ち悪い。
チラリと彼を見遣れば彼はちゃぶ台に並べられたポッキーをガン見していた
「……これ全部食べるの?」
普段直ぐに食べる気の無いお菓子は帰宅するとキッチンのお菓子かごへ仕舞うので未だちゃぶ台にあるポッキーを疑問に感じたのだろう
「………多分」
なんて曖昧に答えたのは、勿論全てを今食べる気は無いからだ。
真夜中に近い今の時間帯に全てのポッキーを食べ切るなんて皮下脂肪を気にする私にとって自害に近い行為だ
「……これ、貰っても良い?」
彼はアーモンドチョコレート味のポッキーへ指先でちょこんと触れると首を傾げた
(んんんんんんん"ッ!!!!可愛い"ッ!!!!)
淡白な雰囲気を纏う彼が不意に繰り出す仕草は驚く程可愛くて
不意打ちを食らった私は思わずニャン○ゅうみたいな声が出そうに成ったが乙女にあるまじき声なので耐え抜いて頷くと
彼はすっかり慣れた様に箱から取り出しサクサクと音を経てて食べ始めた
ハムスターがおやつを食べている姿を眺めている様な錯覚を覚える
目の前の彼は只ポッキーを食べている。其だけなのに込み上げるのは溢れんばかりの愛しさだった
「…………。」
チラリと私を見遣った彼はポッキーを食べながら首を傾げる
「沙夜子は食べないの?」
「………た、食べます」
私が答えるなりポッキーの入った袋を緩く振って数本突き出した其れを私に向けてくれたのでおずおずと口に運んだ
甘い風味が広がって不意に彼と同じ味を共有しているのだと思うとキュンとした
朝昼晩と同じ物を食べていて今更ながら今この瞬間同じ甘味を感じているのだと思うと胸はドキドキと高鳴った