第126章 平凡なケーキ
「……俺も居るんだけど」
すっかり赤く成った私に溜息混じりに言ったクロロさんに苦笑いを浮かべる
クロロさんが居なければ私はあのまま固まってまた彼にからかわれる所だった……ありがとうクロロさん、と心の中で感謝した
後半無理矢理に口に運んだケーキの後にいよいよプレゼントを渡す
クロロさんが無難な物にした。と言って出したプレゼントは本だった
『世界の格闘術』と書かれた分厚い本
読書が趣味のクロロさんらしいプレゼント
彼も「ありがとう」とぶっきらぼうに言った後に中身が気になるのか数ページ捲って中身を見ていた
次いで私が手渡したプレゼント
いざ渡してしまうと喜んでくれるだろうかと緊張してしまった
緊張が現れて思わず正座した私の目の前で彼は実に几帳面に包装を開く
ドキドキと高鳴る胸
開いた包装から覗いたマフラーを彼は悠々とした所作で持ち上げる
実に無表情で何を思っているのか全く思考が読み取れず私はゴクリと唾を飲み込んだ
彼はチラリと私に視線を遣った後に席を立つと鏡の前に立ちマフラーを首に巻く
やはり彼は何をしても様になる
大柄な彼に厚手のマフラーはしっくり来ていて
「似合う?」
と、首を傾げた彼に私はこくこくと何度も頷いた
「ありがとう」
ふわりと微笑んだ彼にノックアウトされた私は床に転がり暫く固まっていた
何故か其のままマフラーを外さない彼が可愛くて可愛くてニヤニヤが暫く止まらなかった
再度乾杯した私達は深夜迄楽しく話し合い酒を煽り
クロロさんが帰ったのは朝方になってからだった
賑やかだった室内に静寂が訪れて座椅子に腰掛けて彼が傾けたグラスの氷がカランと音をたてた
「遅れちゃったけどイルミンお誕生日おめでとう!」
「ありがとう。………こんなパーティーは初めてだったけど楽しかったよ。」
「良かった!私も楽しかった!」
「沙夜子は今日休み?」
「うん!イルミンは?」
「休み。……夕方迄寝ちゃおうか」
「それ最高!」
「ね。」
私達はすっかり明るく成った頃に布団に潜った
「おやすみなさい!」
「うん、おやすみ」
何故かワクワクと跳ねる胸
楽しそうに響いた彼の声
彼も私と同じ気持ちなのかな、なんて思うと幸せな笑みが漏れた
今日は良い夢が見られそうだ