第126章 平凡なケーキ
沢山の店舗を早足に回りマフラーはモノクロチェック柄のウールタッチ素材の物を選んだ
ウールのような起毛感や肉厚さを持ちながらもチクチクしないやさしい肌触りが決め手と成った
非常にボリュームがあるので首に巻くだけでワンポイントになるし色味からもファッションに合わせ易い
彼は全く寒がったりしないが、アクセサリーを購入していた経歴からお洒落には気を遣っている筈だ
紺色の包みにラッピングしてもらい私は次いで足早に100円ショップにて部屋を飾り付ける色々を購入し、夕飯の材料と誕生日ケーキを購入した
………両手に荷物………
しかし、上司に頼んで早引きしたのでアパートに到着したのは普段より早かった
この誕生日会の為に早引きする程ガチなのだ………
ケーキを傾けぬ様に扉を開く
「お帰り!」
「!!!!びっくりしたぁ……」
中に居たのはクロロさんだった
驚きで跳ねた肩から荷物がずり落ちて危うくケーキが台無しに成る所だったが悪気無さ気な声色で 大丈夫か?なんて言われて愛想笑いを浮かべる
まるで我が家の様に座椅子で寛ぐ姿に暫し唖然とした後に溜息が出た
確かに昨日私は「17時にアパートで」と彼に送った
しかし住人を差し置いて室内で待っているなんて事があるだろうか……
異世界の方々は無断で他人の家に上がり込むのが習慣なのか……?なんて考えた
「あ、これ酒持ってきた」
「え、わざわざありがとうございます!」
キッチンへ食材を運んでいた私に歩み寄ったクロロさんはニッコリ爽やかな笑顔を浮かべて白ワインとウイスキーを手渡してくれた
「ヒソカが帰らないから余ってるんだよ」
「あー………。」
やはり私の予想は当たっていた
手料理に飢えてるなんて言っていたし、居酒屋にも以前一人でやって来ていた
「………ヒソカさんは何処に……?」
「さぁな。電話は出るが雲隠れしてる。」
「そうですか……」
「…………電話してみるか?」
「いえ!大丈夫です!!!!」
私の顔色を伺う様にじっと此方を見ていたクロロさんだが私がブンブン首を振ったのを見て「だよな」と呟いた後に
「で、夕飯は何?」
キラリと瞳を輝かせて首を傾げた