第126章 平凡なケーキ
無表情の彼はきっとそんな事を考えてはいなくて、私との別れを多少寂しく思っても私の様に身が裂かれそうになるなんて事は無いのかな……なんて考えると涙が滲んだ
アルコールも取っていないのに突然泣き出してしまっては情緒不安定過ぎる
私は涙が流れ出したりしないように懸命に目を見開き耐えた
「………なんて顔してるの。」
「え、ご飯の美味しさに感動してます」
「………ふーん。」
「イルミさんも感動して良いですよ。」
「美味しいよ。感動はしないけど。」
彼はふぅっと息を吐くと付いていたテレビのボリュームを下げた後に真っ直ぐな視線を向けた
「今更だけど………沙夜子ってさ、誕生日いつ?」
「え……?12月20日です……けど」
突然誕生日を聞かれるなんて思っても見なかった為に涙が引っ込む。
……テレビからもそんな話題は聞こえて来ないし、一体どうしたのだろうか……
いや、其れよりも私は重大な事に気が付いた
彼の誕生日を知らない………!!!
彼のプロフィールは公式で知っている。しかし謎な部分が多く誕生日は載っていなかったのだ
「イルミさんの誕生日はいつですか……?」
「知らない。」
「………………え」
衝撃だった。誕生日は皆当然の様に知っている物だと思っていた
暗殺一家だからかとも考えたが彼の弟であるキルアにはしっかりと誕生日が記載されていた
という事はお家が暗殺一家だからというのは無関係で
彼が単に無関心で忘れてしまった、もしくは本当に祝われた事も無く其れを気に止めず生きてきたかだ
「初めて仕事した日が誕生日って事に成ってる。だから本当の所は知らない」
「…………。」
思考を巡らせていた私にチラリと視線を向けてグラタンを頬張った彼は特段気にする様子も無く言った