第124章 輝く風景
思えば自身は彼女に教えられてばかりだ。
此の世界の事、星や空、花が海が綺麗な事。
動物は愛らしい事、食事は人を笑顔にする事、昼寝をする心地よさ、会話を交わす喜び、恋をすると世界が色を変える事
いつか彼女は
「今の世界での休日は何してますか?」
と、妙な質問をした
「え。沙夜子は馬鹿なの?………テレビ見たり外出したり……何時も沙夜子と一緒なんだから知ってるでしょ」
「はい」
其の笑顔は何処か満足気でキラキラ輝く瞳は泣き出しそうにも見えた
(………何と無く質問の意味が解ったかも。)
彼女に会いたかった
今直ぐに会いに行こうと思った
前田に別れの挨拶をすると前田は酷く驚いた
「あと何日かで車で帰れるんやぞ!?ヒッチハイクでもするんか……?!」
「うん。とにかく帰るよ。俺も今の内に好きに生きてみる事にした。」
「…………そうか!……って言うても大丈夫か…?夜やし明日の朝にしたら……」
「平気だよ。」
「そうか……また連絡しろよ!」
「気が向いたらね。」
「あははは!元気でな!気付けろよ!」
「うん。前田もね。」
直ぐに現場責任者に話しを付けてしっかり日給分貰い、宿舎を後にした
「生意気なやつや……」
なんて笑い混じりに言った前田の声を遠くに聞いた後にとにかく走った
全速力でも高速道路を走れない分時間を食った
見知った景色が見える頃には空はすっかり明るくて彼女はまだ夢の中だろうか…なんて考えると自然と笑みが漏れた
いつの間にか落ち着く様に成った木造アパート
慣れ親しんだ玄関を開けば彼女は大粒の涙をキラキラ光らせて胸に飛び込んで来たのだった
「ただいま」