第124章 輝く風景
家を捨てて自由を生きる前田は人生に悔いは無いと笑った
その生き生きとした笑顔は何故か自身の胸を打つ物があった
前田の弟は………きっと否応なしに跡を継いだ。
しかし前田の話しから、全てを乗り越えて弟はきっとそうしなければ成し得無かった幸せを掴んだのだと思った
……………俺は……俺はどうだろう…………
漠然と目の前の男の話しに自身を重ねた
らしく無いのは解っている。
だけど脳裏に浮かぶのは彼女の事ばかりだった
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11月09日
やけに空が綺麗に見えた
積みあがった資材の隣にひっそり咲いた花が風に揺れていて昨日も咲いていたのだろうか、なんて思う
前田の話しを聞いてから頭の中は彼女で一杯に成っていた
……………俺が自由に生きるなら………
其れを望んで良いのなら全て彼女と共に歩む人生が良いと思った
………………其れが出来たなら苦労はしないけど。
初めて自身の人生を考えた。家を捨てる事を考えた。だけど其れは自身には出来ない選択
ならばせめて今此の世界に居る今だけは彼女と共に………
流れる雲が真っ白で綺麗だ
彼女も空を見ているだろうか……なんて考えた
木材を運びながら檜の香りが鼻を掠めて足湯での一時が浮かぶ
鳥が囀ずれば
「見てください!あの鳥何て鳥ですかね?!」
なんて元気に木々を見上げる彼女を思い浮かべる
昼の定食を食べながら彼女の手料理を食べたいと思った
とにかく今の自身の世界を支配しているのは彼女なのだと痛感して溜息が漏れた
(…………好きって結構大変なんだね。)