第124章 輝く風景
フレンドリーな笑みを浮かべた其の男は目尻のシワが印象的で名前は前田と言うそうだ
「で、お兄ちゃん名前は?」
「………神崎」
本名じゃ目立つので彼女の名字を名乗る
男は何故か自身に付きまとい夕飯の席に誘われてしまった
このボロい宿舎の他、辺りには民家しか無くやる事も無いし断る理由をこじつけられなかった
以前なら理由等無くても断っていたのに……なんて思う
食堂で出された夕飯は想像よりも豪勢だった
「俺奢るから飲み飲み!」
「………どうも。」
前田と何故か乾杯して煮付けを口に運ぶが味気無く感じる
隣では旨い旨いと騒いでる奴がいるけれど味が悪い訳じゃ無いのに美味しいと感じなかった
唯一設置された食堂のテレビから彼女の好きなバラエティー番組が流れる
彼女は今何をしているのだろうか。同じテレビを見ているかもしれない、なんて思った
その日は酒もそこそこに床に着いた
前田に充電器を借りようと思ったが差し出された充電器は形状が異なりガラケーという物専用らしくスマホを充電する事は叶わなかった
(…………沙夜子はもう眠ったかな)
なんて見上げた窓の外は満天の星空でいつかのプラネタリウムを思い出した
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11月08日
翌日も与えられた仕事をこなして食事と入浴は何故か前田と一緒だった。
…………一週間とは案外長いと二日目にして思う
食堂のテレビから家で見ている筈だった番組が流れる
夕飯にやって来てから随分時間が経った