第124章 輝く風景
遡る事11月07日
現場から車に乗り込み三時間走った所で違和感を抱いた
遠方にしたって走り過ぎている
「ねぇ、これ何処に行くの?」
度々現場で会う男に尋ねれば島根県だと伝えられた
そして更には一週間泊まり込みで宿舎の飯が旨いなんて事を言われてしまい焦りが浮かぶ
彼女に連絡しなければと開いたスマホは昨夜クロロにヒソカの件で長電話をしたせいで充電残量が残り3%だった
メールの文章を打っている途中に力無く消えた画面に思わず舌打ちをする
尚も走り続けた車で到着した現場は和な山間だった
鳥の囀ずりさえも鬱陶しい
しかし来てしまったものは仕方なく黙々と作業をこなした
昼休みに宿舎の定食を食べようと髭の男に誘われたが断って彼女お手製の弁当を食べた
少し焦げた魚を見て今朝の彼女を思い出す
寝惚け眼で料理をする彼女は危なっかしく実の所ハラハラしながら見ている
今朝は鯖を焦がした、とくしゃくしゃの寝癖を揺らして苦笑いを浮かべていた
思わずクスリと笑みが漏れる
焦げた魚は苦かったが全て口の中へ放り込んだ
午後からも与えられた仕事を黙々とこなして日が暮れた頃に終了となり泥臭い男達と一緒に宿舎へ向かった
実にボロボロで自身が軽く押せば崩壊しそうな建物はホラーが苦手な彼女なら絶対に怖がる建物だろうと思う
流れのままに入室した其所は寝室の様で6人の男がぎゅうぎゅうに成って眠るらしくうんざりしてしまった
何せ実家のトイレより狭い部屋に他人と眠るなんて考えると反吐が出そうだ
部屋に居たくない一心で大浴場に行くと禿げ頭で恰幅の良い男に話し掛けられてしまった
(…………鬱陶しいな。)