第123章 足りない景色
11月07日
私は通常通りアルバイトを済ませて帰宅し、彼の帰宅を待っていた
「…………?」
普段彼が帰宅する筈の19時頃を過ぎてテレビはニュースからバラエティー番組へ切り替わっていた
シンと静かな部屋に笑い声が響き私はそわそわと身体を揺らす
夕飯は出来上がりちゃぶ台の上でラップを被って湯気が水滴に変わっていて私はスマホ画面"イルミさん"の文字をタップした
無機質な機械音が告げたのは『電波が届かない所にいらっしゃるか電源が入っていない為かかりません』だった
私の頭は真っ白に成る
……………まだ、………まだ彼が居なくなるには早すぎる………
すっかり肌寒い空気は出会った頃を思い出す。
12ページあったカレンダーは残す所1枚と成った
だけどまだ………
彼の言った約1年とはこれくらいの期間だったのだろうか………?
朝の光景を思い返す
何時もの様に作業着に身を包みお弁当を入れる鞄を下げた彼は後ろ手に手を振って出て行った
私は重たい瞼を擦りながら小さくなって行く彼を見送った
『行ってくるよ』
朝が弱い彼が気だるげに言った言葉
時刻は22時を過ぎた
何度もかけた電話は繰り返し繋がらず私は彼の段ボールを見ていた
覗いた所で変化は無く出会った頃の仕事着は底に眠り特注品だと言っていた針は綺麗にケースに仕舞われていた