第122章 雨と神社と山道
「行こうか。」
チラリと私に視線を向けた彼は言うなりエンジンをかける
「はい!」
なんて元気に返事をした私だが…………。
_________"
やって来たのは店から程近い淡○神社
車を降りると海に程近い其所は冷たい海風が吹き、上着を羽織っていても肌寒く感じる
境内に入る鳥居の前にはツボ焼き等を販売するお土産屋さんが三件並んでいたが悪天候のせいか人は疎らで
暗い空に浮かぶ様に鎮座した鳥居が妙に不気味に感じたのは私が単に怖がりだからだろうか
チラリと盗み見た彼は無表情を崩さず迷う事無く境内へ歩みを進める
そう言えば彼は歴史的建造物なんかが好きな傾向にあり、鳥居を確認した時点で立派な建物を連想したのかもしれない………なんて思いながらも二人並んで階段を登ると衝撃的な光景が視界に入った
「っ……!!!!!」
立派な本殿の周りを埋め尽くす様にひしめき合う人形に度肝を抜かれて絶句する
数え切れない程並んだ人形は可愛らしいぬいぐるみなんかじゃ無く日本人形や市松人形等の類いで
どんより暗い空、神社、日本人形と揃えば恐怖心を駆り立てられる他無く、私は直ぐ様此処から立ち去りたく成った
立ち去れ!と言われれば今なら新幹線ばりのスピードが出せる気がする。
………しかし彼は私を他所に本殿に近付くとまじまじと人形を眺めていて
(あんまり近寄るなーッ!!!!怖い!!!!!!私は其所まで行かれへんッ!!!!)
そんな私の内情を知らない彼はゆっくり此方を振り返り首を傾げた
「何してるの?」
「………え、なにも……?」
至って通常通りな彼の様子から察するに彼は日本人形と心霊が結び付かないらしく従って私が日本人形に苦手意識を抱いているとは気付いていないらしかった
…………せっかく彼と訪れたのだ
楽しまなければ…………
最早楽しむという概念が土地狂った私は恐怖心をひた隠して彼の隣に並ぶ
「人形が沢山あるね。」
「そうですねー」
「皆着物。」
「そうですねー」
「でも表情は違うんだね」
「そうですねー」
私は頭の中で笑って○いともを思い浮かべて人形を見ずに無心で返答していたのだが
「ほら、アイツ笑ってる」
「えっ!!!!」
彼の言葉に酷く動揺して反射的に飛び退いてしまった