第122章 雨と神社と山道
店員さんの「ご夫婦やご結婚考えてらっしゃるカップルには良いですよ」と言う言葉を否定せずに聞いていた彼の心境が気になって仕方がない……
しかも店員さんにはそう見えているのかと思うと嬉しいやら恥ずかしいやら圧倒的に嬉しいやらで内心ニヤニヤしてしまった
そして縁結びのご利益もあるらしく私は是が非でも其所を目的地にすると決めた
そんなこんなで車に乗り込んだ私達だったのだが突然コーヒーが飲みたいと無表情に訴え始めた彼を優先してコンビニに向かった
普段はそうでも無いのに何故このタイミングで訴える程コーヒーを欲したのかは謎だが其の綺麗な横顔から深層は伺え無い
車内にて彼はホットコーヒーを、私はミルクティーを飲む
特段急ぎでも無い突発的な外出なのでこのくらいの事は気にならないのだが引っ掛かるのは天気の事だった
一応傘はあるが、やはり観光する時に雨が降っているのといないのとでは違う
いくら曇り空でも雨よりは幾分かマシだ
チラリと外を見遣れば黒い雲に覆われた空は晴れる気配も無く今にも雨粒を落としそうだった
…………正直急ぎたい………。しかし、完全リラックスモードで背もたれに体重を預けてコーヒーを飲む彼を急かす事は胸キュンしている今の私には至難の技の様に思えた
彼は私と二人きりの時だけ気を許してくれている様な気がする
スーパーでも何でも外出先問わず他人がいると彼は常に気を張っている気がするのだ。其の対象はクロロさんやヒソカさんの様な馴染みある人でも。
見分け方は無い……ただ肌で感じるぼんやりした物で、車内はやはり私と同様に彼にとっても二人きりの空間の様に思えるのだろう
今も家でしか見せない様なぼんやりした表情が伺える
「イルミさん」
「……んー?」
「眠いですか?」
「いや。」
なんて他愛無い会話も愛しく穏やかで表情が綻んでしまう