第122章 雨と神社と山道
お造りは本当に新鮮で歯応えがあり、鯛の小鍋は素材の甘味際立つ絶品ものだった
ミニ海鮮丼と名付けられた其れは普通盛りくらいの器に惜し気も無く鯛は勿論、鮪やイクラなんかも乗っていて海の幸がぎゅっと詰まった様な一品だ
そしてまたさっぱりとしたお吸い物と合い、食欲をそそりガツガツ食べてしまった
前菜の小料理も茶碗蒸しもデザート迄ペロリと平らげた私は欲していたグルメを堪能した幸福に溜息を漏らす
「ごちそうさまでしたぁ」
「ごちそうさま。」
実の所、彼は外出前に私お手製のお弁当を食べていたのだが綺麗に平らげられた空っぽの器
「………無理してないですか?」
「何が?」
「お腹一杯やのに頑張って食べたとか……?」
何せ通常の定食と同じ量あったのだから少し前とは言えお弁当を食べて来た彼にはきつかったのではと危惧したのだが
「……?平気だけど。」
「そうですか……」
キョトンとした表情で言った彼に心の中で"痩せの大食い羨ましい……"と思ったが口に出さなかったのは「日頃動かないからだよ」と怠け者扱いされるのが嫌だったからである
「で、目的は達成しちゃったけど……帰る?」
なんて問う彼は窓の外を眺めていた
窓の外にはすっかり雨は止んだがどんより厚い雲が太陽を隠していて昼間にしては暗い空が広がる
「雨やんでる今の内にどっか行きましょうか!せっかくやし!」
「良いよ。」
「ちょっと待ってくださいね、検索しますから!」
「……こういうのは観光客慣れしてる店員に聞くのが手っ取り早い」
なんて言った彼はすんなり店員さんから観光の提案を頂き次の目的地は本当に手早く決定したのだが