第122章 雨と神社と山道
彼に食いしん坊だと言われるが全く其の通りだ……なんて思いながらも私は無我夢中で其のお店の名前をメモした
(…………真鯛…………食べたいなぁ……)
彼は家や居酒屋、釣りに行った際も鯛を好んで食べていたので彼と食べに行きたいなぁ……なんて考えているとガチャガチャと玄関から音が鳴り扉が開いた
「ただいま」
「!!!お帰りなさい!」
雨に濡れた彼の姿にタオルをひっ掴んで駆け寄ると彼は小さくお礼を言って滴る雫を拭いながら随分早い帰宅の理由を教えてくれた
何でも雨のせいで野外現場がストップして出戻りとなったそうで
私は思いがけずに彼と一緒に居られる事に歓喜の余り跳ねながら軽く抱き付いてしまった
「濡れるよ」
なんて言いながらやんわり私を遠退けた彼だが其の表情は柔らかく満面の笑みを向ける
「今お湯張りますね!」
「シャワーで良いよ。」
なんて言って風呂場へ消えた彼をソワソワしながら待つ
床を転がってみたりイルにゃんに話し掛けてみたりして時間を潰していたのだがそんな事をしていたせいでちゃぶ台に頭をぶつけてしまった
「~っ………」
角に頭を打ってしまったらしく鈍い痛みが走ったが其の拍子に落ちて来たメモを見て良いアイディアを思い付く
(今から真鯛食べに行こう……!!)
私は本当に欲望に忠実なタイプだと心底思う。
シャワーから上がった彼にメモを見せて提案すれば二つ返事で返って来た「行こうか」の言葉に私は嬉々として身支度を整えたのだった
_________"
時刻は14時を過ぎ、気が付けば何も食べていなかったせいで空腹を知らせる様に鳴った大きな腹の虫は向かい側の彼にもしっかり届いてしまった様だ
その証拠にクリクリの瞳が此方を向くが私は只目の前のご馳走を見ていた
「沙夜子が餓死する前に到着して良かったよ。」
「流石に餓死はしませんよ!いただきます!!!」
「…………。いただきます」
やはり番組で見た通りミニコースと言うにはボリュームがあった