第120章 ハロウィンの夜
「知ってる」
言いながら私をじわじわ壁際へ追い詰める彼
「………イルミさん………?」
部屋の隅に追いやられた私は只彼を見詰める事しか出来ず頬が熱くなる
整った顔立ちは無表情を崩さず瞳は妖しい光りを湛えていた
「……沙夜子さ、こんな格好してるから男に目を付けられるんだよ」
言いながら薄い布越しに太腿が撫でられてビクリと肩を震わせる
彼の大きな手は熱く体温を伝えた
「沙夜子の右側にいた男なんて胸元ばかり見てたし……ねぇ、自覚はある訳?」
「……あ、……えっと………」
「無いよね。」
すっと細められた瞳に射抜かれて動けない私に低い声が響く中突然ノックと共に店員さんが登場して気まずそうに手羽先を置いて出て行った
直ぐ傍でため息が聞こえたと思ったら彼は立ち上がって何事も無かった様に自身の席に付くと
「なにこれ」
淡々とした口調で言った
「あ、手羽先です……」
本当に彼の変わり身の早さには驚かされるばかりだ
先程迄の妖艶さ等皆無な彼
其れでも未だ騒がしい胸を誤魔化す様に私は手羽先をむしゃむしゃ食べた
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「イルミン!」
「はいはい。」
「イルミン!」
「何。」
「ボーリングしようぜ!」
「………。」
帰宅してからの彼女は何故かテンションが高く衣装から着替える事もしないままにボーリングを提案してくる
その前はカバディという謎の競技に付き合ったし腕相撲も付き合った
そろそろ寝かしつけるのが得策だが着替えも儘ならない彼女を其のまま布団に寝かせるのもどうかと思い、ずるずると付き合っている
「HEY!イルミン!!」
「……………。」
透けた太腿、開いた胸元が揺れる
パーティー会場では不快だった彼女の格好も二人きりの空間ならば満更でも無いものだった
大きな口を開いて無邪気に笑った彼女
(…………馬鹿みたいな顔してる………)
なんて思いながらも込み上げるのは愛しさで、結局男は朝まで彼女の下らない提案に付き合い続けた