第119章 思いと想い
ポツリと漏れた言葉は静かな車内に響いた
「………前にもそんな話しなかったっけ」
ぼんやり間の抜けた声
「しましたけど……優しいから……」
彼は本当に優しい
細やかな心遣いや紳士的な立ち振舞いは本当に非の打ち所が無くそれでいてキザ過ぎない辺りスマートに感じる
惹かれない女性等居ないのではないかと思ってしまうのは私が心底彼に恋い焦がれているからだろうか
「優しくないよ。そんな良い人間じゃない。騙したり利用したり、そもそも暗殺家業だし。」
しかし私の言葉とは違った悲しい言葉を紡いだ
「それとは別の人柄です」
「人柄………初めて言われた言葉かもね。」
「そうなんですか?」
「うん。仕事さえこなせば客も家も其れで満足だし」
「………私はイルミさんの人柄に触れれて嬉しいです!だって誰も知らんイルミさんを私は知ってるんですよ!?めっちゃ嬉しい!!」
「沙夜子は本当に変だね」
彼は自分の事をあまりにも顧みない。
彼は家の為縛られていて誰も彼個人を見ていないというのはどれだけ寂しい事だろうか
表情を消してしまう程に幼い彼には過酷な環境だったのだろうと容易に想像出来て泣きそうになった
「私はゾルディックとか良く解らんけど、イルミさんを知れて幸せです。イルミさんは本当に素敵な人ですよ。可愛いし」
「………可愛いは余計だよ。」
どこか柔らかく届いた声
私達は暫く話した後にぐっすりと眠った