第119章 思いと想い
「………侍は選ばれし者しかなれない鍛練の人です。簡単に居場所も……解りません」
彼の期待を裏切らぬ様に一息ついてから私は真顔で嘘を付いた
………決して悪いとは思わない。
「そうなんだ。残念。」
彼は納得した様に呟いた後にまたチラリと店を振り返った
「あれさ、サムライが練習に使う道具だよね」
「………そうですね。……欲しいんですか……?」
「うん」
こくりと頷く彼の可愛さに心折れた私は只彼の帰りを待った
正直家に木刀なんて置きたく無かった。邪魔だし使わないし
木刀を購入してやたらに長細い袋を手に出て来た純真無垢な彼の姿を見てまた込み上げる笑いを必死に耐えた
また二人並んで温泉街を歩く
昨日車で通った赤い橋を横切れば温泉地らしく川が流れていてせせらぎが耳に響き特有の情緒を感じる
緩い坂を登っていると不意に彼に肩を抱かれて抱き寄せられ突然の出来事に心臓が跳ねる
「………?!」
「車」
観光客で賑わった道を背後から車が登って来ていたらしく軽自動車が通り過ぎて行った
私を気遣う様に車道の反対側に寄せてくれた彼は然り気無く私の手を絡め取り体温を重ねる
「イルミさん………」
「なに?」
「………ありがとうございます」
「別に」
ドキドキと高鳴る胸は彼の手を伝い届いてしまうのでは無いだろうか
しっかりと握り返すと答える様に緩く握り返されて私の頬はたちまち赤く染まる
「ここ沙夜子が好きそう」
「?」
立ち止まった彼は私を引いて歩く
見上げた建物には有馬玩○博物館と書かれていて入って右手にはユニークな玩具が沢山取り揃えられた小さなショップがあった
「おぉ!私のツボ解ってますね!」
「沙夜子は解りやすいから」
ショップ内の玩具を見て回る
見たことも無い木製のパズルやからくり人形なんかも売られていて夢中に成って眺めていると出口付近のショーケースにぬいぐるみが売られていて私は震える
「こ、………これは………ケー○ン社!!!!」
「?」