第13章 優しい手
チラリと隣を見ると彼は真顔だが
それであんなに取り乱していたのかと思うと何だが嬉しくて笑ってしまう
「……何笑ってるの」
「別に何でも無いでーす!あ、それよりさっきイルミさん何処に居てたんですか?外やったでしょ?」
「風俗街」
「ぶっ!!!!」
驚きで思わず吹き出した
「汚いな」
「いや、びっくりして」
「…………ねぇ沙夜子」
「はい」
「右足靴擦れしてるでしょ」
「おぉ……!!よくわかりましたね!凄い!」
「歩き方に違和感あるし、何時もより歩く速度が遅いから」
本当に凄い
私はそんなに変な歩き方をしていただろうか……否、常人には判断出来ない程些細な違いなのだろうが彼の目にはズバり言い当てる程一目瞭然らしい……神業だ
なんて感心していると彼が徐に私の目前で背中を向けてしゃがみ込んだ
「はい、おぶってあげるから早く」
「えっ!?いやいやいや、大丈夫ですよこれくらい!!」
やれやれと言った感じの彼だが
どう考えたってそんな大層な怪我では無いので全力で否定する
時間帯的に人通りは少ないがそれをクリアしても気恥ずかしさが勝る
私がオーバーリアクションで拒否すると彼は立ち上がり事もあろうに私を軽々と横抱きしたのだ
私は驚きと高さへの恐怖から本能的に彼の首元へ腕を回す
(っ…………お姫様抱っこっ………!!!!)
「い、イルミさん…?!」
此れではおんぶを拒否した意味が無い
おんぶより気恥ずかしい事この上無いではないか……
「……恥ずかしいから降ろしてください………」
私の言葉は虚しくも彼の可憐なるスルーにより聞き入れてもらえず
ぐんと近付いた端正な顔立ちを直視出来ず自宅までの道程をただ俯いてしがみついていた