第13章 優しい手
「えっと、バイト…ですけど」
「だからこんな時間まで何のバイトしてたの」
顔色一つ変えず息が上がっている様子も無い彼だが普段より早口だ
私はオロオロしつつも答えた
「居酒屋五郎……」
「……五郎……」
と呟いたきり押し黙るイルミさん
謎の沈黙が流れる
(????何…?!イルミさん心配してくれたんはわかるけど……何や……)
すると彼は私の頬を片手で挟み込み強制的に自身へと見上げさせる
お陰で私は口がむにゅっと突き出した変顔を晒す事になった上、ちゃんと話せない
「本当?嘘じゃないね?」
「……本当れしゅ」
何とも情けなくヘンテコに返してしまったが、それはイルミさんのせいなので馬鹿にしているとは思われ無いだろう
(それよりドッキドキするぅ~!!!)
真っ直ぐに見詰められ私も見詰め返していると大きなため息と共に私は解放された
正直キョトンである
そんな私を他所に自宅の方向へ歩き出すイルミさん
慌てて後を追う
「……あの、イルミさんどうされたんですか?」
「……メール、夜もバイトするって書いてたから」
「……?はい」
「身体売ったのかと思った」
「……はい………はい!?」
「居酒屋なら先に言ってよ」
……普通そっちに直結しますか?!とは言えず
「……はい、何かすみません。」