第119章 思いと想い
気が抜けた様に開いた唇がセクシーでドキリと胸が跳ねた
只眠っているだけなのに私をドキドキさせる魅力を多分に持つ彼はやはりずるい
指先で頬を突っついてみる
きめ細かい肌質ながらやはり彼は男性で私の丸い頬より固かった
次いで眉毛を撫でてみる
サラサラの髪質と同様に柔らかな眉毛は無駄にキューティクルでもかかっていそうだ……なんて考えながらも視線が向くのは唇で
そのぷっくりと形の良い唇に触れてみたくなった
彼が起きている時ならば恥ずかしいし変質的過ぎて出来る筈も無い行為だが眠っているのだから平気だろうとそっと指先で突っついてみる
柔らかくフニフニした感覚をなぞってみると小さな唸り声が上がったので即座に飛び退いた
(………………っ危なかったああぁ………)
彼にバレたら非常に気まずいので寝室を後にして身支度を整える事にした
メイクと髪型をセットして洗面台の前で着替えるのだが首筋に残った薄紅色の痕に身体は熱を上げる
(しかもまた見える所に…………)
私はコンシーラーを駆使して痕を綺麗に隠した
歯形も以前より薄く成った事で隠れる様になっていた
「………よし。」
私はひとり頷くと彼を起こすべく寝室に成っている和室へ向かう
時刻を知らせる壁掛け時計が昨日知らされていた朝食時間に迫る
彼は寝返りを打って此方に背中を向けた状態で眠っていた
「イルミさーん!もうちょっとで朝ご飯ですよ!」
叫びながら揺するとゆっくりと伸びをして彼は気だるげに起き上がった
「おはよう」
「おはようございます!」
普段より低く掠れた声で挨拶した彼はガシガシと頭を掻きながら私の首筋に視線を向けた
「………消えたの?」
直ぐに言葉の意味を理解してカッと熱くなる頬
「いえ、見える場所やからコンシーラーで隠しました………」
「ふーん。」
聞いた割には興味無さ気に呟きを落とした彼だが身に着けていた浴衣が気崩れて立派な胸板や腹筋を惜し気も無く露にしていた
私はそそくさと部屋を出てテレビを付ける
あの部屋に居れば確実に天に召される………と確信したからだ